CIGARRILLO


 嗅ぎ慣れた煙草の香りにソルはうっすらと目を開けた。

 覚醒が完全でないのはつい先程まで強いられていた行為に寄る所が大きいのだろう。

 いつものように賞金首を換金所に連れていくとカイに見つかり、なし崩しにベッドまで引きずり込まれた。

 何故その強引さを女に発揮しないのかと思いながらも結局流されるままここに至る。

 空気を吸い込むとじり、と火種が煙草の葉を焼いた。

 違和感なくソルの煙草を燻らせているのは紛れもなくカイだった。

 味は二の次三の次、ただ肺への刺激を考えたきつい葉なのだがカイは余裕を持って紫煙を吐き出す。

「案外様になってるじゃねぇか」

 身を起こし汗ばんだ髪をかき上げながらソルが言い、カイはそうかと満更でもなさそうに笑って答えた。

「吸えねぇと思ってたがな」

「その方がイメージが良いからな。吸えなくはない。欲を言えばダビドフのシガリロかノーベルプティがいいんだが」

「貴族趣味」

「美味いものが高くなるのは仕方ないだろう」

 億劫そうに首を鳴らすソルにカイが苦笑を返す。

 ダビドフは葉巻のロールスロイスと呼ばれておりノーベルプティも欧州で有名な老舗の煙草メーカーが出しているシガレロだ。

 なるほど、細巻き煙草を薫らせるカイは絵になるだろう。

 ソルがカイの手から半分ほどになった煙草を取り上げ煙を吸い込む。

 普通の人間なら一瞬で血が下がるようなそれはいつもと変わりない。

 パチンと煙草の先を飛ばして火を消すと灰殻をゴミ箱に放り込む。

「体力落ちるからやめとけ」

「煙草も吸えない子供に抱かれて楽しいか?」

「それは個人の好みで大人とか子供とかは関係ねぇだろ。そんなもんを気にする方がガキだ」

もそもそとシーツを引き上げ二度寝の体勢に入る。

 それもそうだな、と言いあっさりと納得したカイがそのシーツを剥ぎ取って肩を引き寄せた。

 面倒臭そうにカイの方を向くと音を立てて口付けられる。

 ひとしきり唾液を交わして離れたカイにソルはあからさまに呆れた視線を向けた。

「まだやんのか」

「折角起きたんだし、いいだろう」

 好き勝手に愛撫を施すカイにそう言う身勝手な所がガキなんだ、と言いかけたがソルは口を閉ざす。

 そんなガキに付き合ってやっている方が酔狂だろうという返事が予想できた為であり、それへの反論が思いつかなかった所為だ。

 結局許してしまっているのは自分であり、それが負けであることを無意識に自覚してるからこその沈黙だった。


end


'07.05.28   月代 燎
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以前言っていた煙草を吸うキスクです。
夢見すぎですね、女王の方が惚れてるとか。
まぁ、偶にはいいかなと。
実は某掲示板に投下した物の改変。

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